2012年6月14日木曜日

山形浩生さん関連のTEDスピーカー4人

NHKで特集されたりして、知名度が上がってるプレゼンサイト「TED」ですが、結構な歴史があって探すと「え、こんな人が!」と思う人物が出ていてなかなか面白い。本当に有名な方々、例えばスティーブジョブスとかは誰かに既に紹介されてるわけなので、翻訳家の山形浩生さんに著作が翻訳されたことがあるTEDスピーカーを紹介してみましょう。


私が翻訳者で本を選ぶことはないですが、彼の仕事だけは定期的にチェックしてます。分野も哲学、経済、コンピュター、建築、毛沢東と極めて広いですが、読みやすくその分野の本をもっと読みたくなりその翻訳本が入り口になることもしばしばあります。彼の本の値段は高い場合も多く、までしてきた仕事量も大変な数、本の出版もかなりのハイペース、しかも彼は民間調査会社で働きながら、翻訳の仕事をしているわけなので、どんな超人なんだと。

難しい本を読みやすい文章に翻訳し、堅苦しくない形で啓蒙(堅苦しい言葉ですが)してる。そういう意味で言ったら、TEDの動画は幅広い層を対象としてるし、知識への入口としては本よりもハードルは低い。彼が積極的に紹介してきたオープンソースなやりかたで世界各国の有志が翻訳してTEDが成り立ってるのは、彼の仕事の正しさを証明してると言えるでしょう。


1 サイバースペースでの法律についての専門家であるローレンス・レッシグは、早くからインターネットやデジタルがそれまでの既存のデータフォーマットと全く違う特性をもつことを指摘し、サイバースペースに合わせた法律が必要だと説いてきました。このスピーチでは著作権がいかに芸術性を圧迫するかを話してます。代表的著作は CODE Version 2.0 インターネット時代における著作権やサイバースペース法に興味がある方は是非一読を。

ローレンス・レッシグ 法が想像性を圧迫する
Larry Lessig on Laws that choke creativity



ローレンス・レッシグ Re-examing the remix
Larry Lessig on Re-examing the remix



2 デンマークの学者 ビョルン・ロンボルグ。地球温暖化問題がちょっと前はかなりブームでアル・ゴアの「不都合な真実」とかが注目されてましたが、地球温暖化をもっと冷静になって考えろというのが著者の主張。「地球と一緒に頭も冷やせ!温暖化問題を問いなおす」が、山形さんの翻訳本。温暖化によるデメリットのみが叫ばれてるが、メリットにも目を向けるべき、深刻な餓死などの問題などに比べ地球温暖化は限られた資源をかけるべき問題かと問いかけてます。 

ビョルン・ロンボルグ
Bjorn Lonborg sets global priorities



3 スーザンブラックモア 哲学者との対談を集めた「「意識」を語る」が山形さんの翻訳書。正直、この本は哲学の予備知識のない私にとって非常に難しくて途中で挫折しました。ただしこのプレゼンのテーマは「意識は語る」と全然違うテーマでわかりやすい。彼女は「利己的な遺伝子」のリチャード・ドーキンスが提唱した言葉の遺伝子「ミーム」の権威で、「ミームマシンとしての私」という本を書いてます。このテクノロジー化された時代ではミームがより簡単に複製・増殖することから彼女は、新しい種類のミームとして「テーム」という言葉を提唱してます。

スーザン・ブラックモア : ミームとテーム
Suzan Blackmore on memes and teme



4 自由は進化する が山形さんの翻訳書。哲学者の彼の著作は分厚いし、高いのでハードルが高いですが、TEDのプレゼンはハードルを下げてくれます。哲学というと部屋でひとり思索に耽るようなイメージがありますが、現代の哲学者達は脳の構造や実験など科学的なアプローチで哲学的主題に挑んでるのが過去の哲学者とは違うと思います。また、彼はさっき紹介したスーザン・ブラックモアの「「意識」を語る」でも対談者のひとりとして登場してます。2つ目の「危険なミーム」というプレゼンの中では、ジャレド・ダイアモンドの「銃、鉄、病原菌」を引用しながら、南アメリカ大陸の原住民を殺した病原菌のように危険なミームが広がっていくことに警鐘を鳴らしてます。

ダニエル・デネット 我々の意識について
Dan Dennet on our consciousness


ダニエル・デネット 危険なミーム
Dan Dennet on dengerous memes


2012年6月13日水曜日

フィリピンHIPHOP トップ10の紹介

世界中にご存知のようにHIPHOPは広まってるわけますが、当然のごとく私が住んでるフィリピンも同じです。アメリカ産のHIPHOPは世界中で大人気ですが、それ以外の国のHIPHOPのことを知ってるのはご当地の方と一部のHIPHOPマニアの方だけ。アメリカ以外のHIPHOPはご当地だけで消費されてるというのはどこか悔しいので、以前Twitterで紹介したフィリピンHIPHOPをにまとめます。

下記のフィリピンHIPHOPに関するトップ10をYoutubeの動画つきで紹介
http://pinoyhiphopsuperstar.blogspot.com/p/top-10-pinoy-hiphop-artist.html?spref=tw

10位は同率で2つ、解説がタガログだからよく分からないけどもとりあえずYoutubeで100万超。
 Jawtee - Jbobo part 3:






おなじく10位はMastaPlann。フィリピンのヒップホッパーが夢見ることを成し遂げたと紹介されてます。曲調は違うけどジャンプアラウンドを思い出すようなネタ
MastaPlann-bring that booty 1992 ORIG MTV:


  9位はDon G、ギャングスタラップを蘇らせた人物とのこと。
Don G Belgica - Buhay Ng Isang Tunay:




同じく同率9位はDenmark。記事中で触れられてる「Louningning」は90年代のHIPHOPの音かつ南国っぽいゆるい曲調がなかなか良い感じ。
                  Denmark - Louningning: 

伝説的なギャングスタラップグループDeath Threat が8位。このあとで登場するGloc-9もこのグループからデビュー。伝説のラッパーFrancis Magalonaも参加
Death Threat Ft Francis Magalona - Private Diane



7位はD-Coy。Madd Poetというグループからキャリアとスタートさせた彼はHIPHOPレーベルを作ったり、様々な賞を受賞したりしている 
D-Coy - Crazy World


6位はMike Swift ディレクター、ライター、小説家みたいな事を書いてあり多彩な方の模様 Mike Swift & J-Hon - Sold Us A Dream [Music Video]: 



5位はMike Kosa。シンプルなトラックとタガログ語のラップが心地良い。再生回数は100万回超。
Mike Kosa - My Game: 


  4位はLoonie。Stick Figgaというグループでデビューしバトルでも名を馳せてる。バトルも含めYoutubeでの再生回数多し
Loonie [Ft.Quest] - Tao Lang (LYRICS): 


3位はKing of Pinoy HiphopことAndrew E。彼がジャケットに登場してる怪しいフィリピンHIPHOPの海賊版CDを街で良く見ます。
Andrew E: Sinabmarine: 



2位はGLOC-9。2005ー7年の間ベストラッパー賞を受賞。この曲はトラックもUAのような女性シンガーがかなりいい味を出してます。
UPUAN by GLOC-9 feat. Jeazell Grutas (OFFICIAL MV):


2位ということでもう1曲。アコギとシンガーと共演した曲は、シンプルな構成だけに彼のラップの良さが引き立っててカッコいい
1 Hit Combo feat. Gloc9 Official Video: 


1位はFrancis M。フィリピン人にフィリピンのHIPHOPでおすすめ聞くと彼の名前がが必ず上がります。HIPHOPというよりも生音、ミクスチャーな音でラップしてる曲多し
The Yes Yes Show - Francis M & Parokya Ni Edgar: 


1位なのでもう一曲。この曲を彼のベスト、フィリピンHIPHOPベストとする人も多いです
FrancisMagalona - Kaleidoscope World: 

フィリピンの国自体が旧宗主国のアメリカに多大な影響を受けており、国民全員が英語を話すので、よくも悪くもアメリカの影響を多大に受けてます。タガログ語と英語のラップが混在しているのはそれを象徴していると言えるでしょう。もっとアンダーグラウンドな、フィリピンオリジナルの音を追求しているHIPHOPを聴きたいので、そういう連中に会えるまで地道に情報を集めるしかないですね。

2012年6月11日月曜日

Thrilla in Baguio パッキャオ対ブラッドリーをパブリックビューイングで見てきた

6月10日は日本ではただの日曜日でしょうが、国民的英雄のパッキャオの試合がある特別な日でした。日本でボクシングはそれほど人気がないこともあり、パッキャオもあんまり知られてないですが、映画館でパブリックビューイング、試合中は犯罪がゼロ、ボクシング8階級制覇、昨年の年収300万ドル(おそよ27億円)、現役の国会議員など比類なき活躍をしているボクサー。パッキャオの試合は国民的行事と言ってよいほど注目度が高く、日本で言うとサッカーのワールドカップみたいな感じです。

僕がボクシングを好きになったのは10年くらい前ですが、こんな貴重な経験はないのでSMバギオ(フィリピンにおけるイオンのようなもの)でのパブリックビューイングに行ってきました。

チケットカウンターにもこうやって特集されてます。

WBOウェルター級チャンピオンシップ
マニー・パッキャオ対ティモシー・ブラッドリー


チケットは400ペソ(約800円)、マクドナルドの時給が50ペソ(100ペソ)のこの国ではかなりの高額。テレビで放送してることもあり、わざわざ日給に近い金額を払って映画館で見るのはかなりの好きもの、中流階級以上、もしくは海外からの仕送りがある方々と思われます。


 記念グッズ1 Tシャツ 一枚110ペソ(約220円) 安かったので2枚買いました。




記念グッズ2 特性タンブラー 横のホットドッグ、中身のコーラとセットで150ペソ(約300円)


チケットの金額もありどの程度人が集まるのか疑問があり、前座の試合まだそれほど人は集まってませんでした。それでもパッキャオの試合が始まる頃には、おおよそ200名ほどの観客が集まってました。SMシネマでは4つのうち2つがパッキャオの試合だったので、SMバギオには恐らく400名程度が集まってたと思います。


パッキャオのメインイベントはWBOウェルター級のベルトがかかっていて、試合前にフィリピン国歌斉唱がありました。観客が全員起立し、胸に手を当ててる人もいてフィリピン人から愛国心を感じると同時に、フィリピン国歌が終わりアメリカ国歌がはじまると全員座ったところに少し違和感。試合会場だと両方の国歌が終わるまで起立してるのが常識のはずだけど、ここはフィリピンのパブリックビューング会場だからそのへんは緩いのかもしれません。日本だとどういう風になるのかと思ったり。

試合が始まると、最初のラウンドはパッキャオが攻勢、良いパンチには歓声をあげラウンドが終わると拍手してて会場は盛り上がっていました。前半はパッキャオがいいパンチを当てて優勢に試合を進めてたので、6ラウンドまではラウンド毎に拍手があったと思います。

7ラウンドはブラッドリーがボディを打ちだし試合の流れが変わっていき、パッキャオにいい場面がそれほど見られなくなると観客も声をあげず静かに試合の様子を見守ってました。12ラウンド終了後、まさかの2対1の判定負けを喫すると葬式のような空気に。

パッキャオは試合後、スタッツを自身のFacebookページにあげており、そこによるとデータ上ではパッキャオが優勢だったことがわかります。


パッキャオが勝っていたという声はいくつもあるようで、パッキャオの母親が「勝利を盗られた」と言ってたり、パブリックビューイング会場では判定に対してブーイングが起こったと書いてます。


「パッキャオの試合どうだった?」と数人のフィリピン人に聞いたらこんな感じでした。

・議論を呼ぶ判定、ボクシングは死んだ。マルケス戦は負けでも受け入れられたけど、この判定はおかしい。

・俺はフィリピン人からかもしれないが、パッキャオの勝ちだと思った。4ラウンドはダウン寸前まで追い込んだだろう?

・負け。特に後半が全然良くなかった。

・僅差だったし惜しかった。

僕はラウンド毎に採点をつけていたわけではなく、現時点では試合をもう一度見れないので採点に何かいう事は出来ませんが、年齢や国会議員など多忙なスケジュールにより衰えが感じられるのは正直なところです。実際、国会議員になって以降の試合では階級をあげたことも関係ありますが、試合のパフォーマンスが落ちており勝利もKOではなく判定によるものです。

国会議員の代わりはたくさんいるし、ボクシング引退してからいくらでも出来ますが、ボクサーパッキャオは歴史上にも世界中にもパッキャオ自身しかいません。国会議員を辞めてボクシングに専念して欲しいのが全世界のボクシングファンとフィリピン国民の願いでしょう。